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2003年 メッセージ

取捨善択

新年早々、「早くも誤字脱字か...」と呆れた方もおられるでしょうが、取捨選択ではなく取捨善択で正解なのです。物事の判断をするときには、「損なのか、得なのか」の損得勘定ではなく、「正しいのか、間違っているのか」「善なのか、悪なのか」と自問自答の上、必ず損得勘定抜きの「正しいこと」を選ぶということです。

昨今は未知の判断を下さねばならないことも多くなってきましたが、「正しいこと」を基準に判断すれば、迷いもなく、判断がブレることもありません。「事業から損得勘定を抜いてしまったら経営が成り立たない」が定説ではありますが、「この判断、この施策はお客様のお役に立つのだろうか?」「お客様には喜んでもらえるのだろうか?」この真実の疑問を語らずして、「これをやれば儲かるのだろうか?」では長続きするはずもありません。

私が新入社員一年生の倉庫番の時のことです。当時お取引のあった大手スーパーより、何の予告もなしに着払いで大量の返品が突き返されるという"大事件"がありました。社会人一年生にはとても酷な仕打ちでした。つい先日張り切って荷造りをし、出荷した商品だったのです。世間を知らぬ新米坊主とはいえ、その会社のみならず、そんなことがまかり通る世の中に、言い様のない憤りを覚えたものでした。

でも不思議なものでもう一方では、生きた社会勉強をしたような気もしていました。「世の中、これくらいヒドイことを平気でやれる様じゃなかったら大きくなれないのだ!!」って。でも心の隅では「だけど違うだろ!!」とつぶやいていました。あれから23年、どうにもこうにも行き場を失ったその会社を見るにつけ、「やっぱり正義が勝つのだ」なんてついついニンマリしてしまいます。

23年間の社会人生活の中で様々な人間模様も見てきました。自分の損得勘定ばかりを優先させ、姑息な手段ばかり構じる人達もいました。右肩上がりの日本経済に支えられて、一時的には大きくなったような錯覚もしましたが、10年以上にもなる"平成不況"のふるいに掛けられて、皆さん色褪せ消え去って行かれました。私自身、特別正義感が強かったわけでもないと思いますが、志も正義感も持たない大人を見ている間に、少しは成長したのかも知れません。

難しい時代といわれますが、いたってシンプルな時代なのかも知れません。「どうやって売って儲けてやろうか」から「どうしたらお客様に喜んでもらえるのだろうか」と、まずは考えるべきではないでしょうか。「仕事を通じて社会や人様のお役に立つのだ!!」という"志"を持てば、やるべきことと進むべき方向は見えてくると思います。「衣食足りて"志"を知る」なのです。「取捨善択」、それぞれの人がそれぞれの仕事で「正しいこと」を選択する眼と判断基準を持てば、閉塞感漂う現代にも活路を見出せるのではないでしょうか。

平成15年(2003) 年頭所感より

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