
豊富な経験や知識を生かし、当社の発展に貢献してもらうことをイメージして、当社では社外取締役をボードブレーン(Board Brain、通称BB)と呼称しています。一般的には外部の目として「不祥事の防止」を役割とする場合が多いのですが、当社では透明性の高い独自のガバナンスを形成しているため、「持続的な成長・企業価値の向上」への貢献に重きを置いています。その社外取締役各氏に「当社サービスの可能性」などについて話を伺いました。
トラスコ中山において社外取締役としての役割をお聞かせください。トラスコ中山が持続的に成長するための課題に対して、どのような役割を担うとお考えでしょうか。
齋藤
一言でいうと補完関係の役割を果たすと考えています。
私はコンサルティングの世界で仕事をしているため、数多くの企業が良い経営を目指す中でうまくいったこと、いかなかったこと、そしてその要因を学んできました。雑誌や新聞などの外から得た情報だけではなく、実際に企業の中で経営者や一般社員と話をしながらなぜうまくいくのかを学んでおり、それは普通の方がなかなか得られる経験ではありません。そこから得た学びを皆さんにお話することが私の重要な役割だと考えています。
萩原
私は製造業としてモノづくりを行っている立場から客観的な助言が欲しいとのことで、社外取締役を拝命しました。労災防止のための安全対策や、社内業務の改善・提案制度など製造業として30~40年前継続して取組みをしてきた知見を活かし、関係部署との意見交換などを行いました。その他にも先端技術やマネジメント論、イノベーション事例などをマネージャー層の成長への刺激になると思い、業態に関わらず発信しています。
近年の業績と取組み内容の評価、物流センターなど活発な設備投資に対するお考えをお聞かせください。
齋藤
当社は卸売いわゆる商社という基準で考えると売上や収益性はかなり良い会社であると思いますが、今後も設備投資は必要不可欠だと考えています。当社の主要顧客はエンドユーザーで見ると製造業であり、製造業は付加価値ベースではあまり成長していません。成長していない産業に対してサービスを提供し続けるというのは、売上成長を担保できるのかという疑問が湧いてきますが、当社は間違いなく設備投資によって競争力を高めシェアを獲得し、成長してきました。ただし、売上高の方程式は市場規模×競争力シェアであるため、市場が成長していないといくら成長率や競争力を高めても売上が伸びないことがあります。このことから、経営会議(取締役会)でも議論されましたが、製造業だけではなく、別の新たな領域に活路を見出す必要があるはずです。お客様が求めている製品やサービスを提供するためには物流力が大きなカギとなります。物流力を活用して対象顧客、対象市場を広げることで、売上を今後伸ばしていくことは正しい取組みであると思います。ただ、株式市場からは投資による将来の大きな収益性のイメージが見えづらい部分もあるため、IR活動の中で十分な将来に対する開示や発信も必要だと思っています。

萩原
2020年1月から日本でも新型コロナウイルス感染症が蔓延し、当社も2020年の業績は一時前年の3%ほど落ち込みましたが、その後は業績を伸ばしています。「ニアワセ+ユーチョク」(荷物詰合わせ+ユーザー様直送)や置き薬ならぬ置き工具「MROストッカー」など斬新で、業界に先駆ける、お客様の利便性を考えた専門問屋としてのサービスを着実に提供してきたことにより堅実に成長できていると感じます。一方、プラネット愛知やプラネット新潟など大型の投資フェーズに入っていますので、次の飛躍に向けて大きな仕込みをしている最中です。着実なマーケティングと物流体制、そしてDXなども踏まえ手を打っていることは社外取締役としても非常に頼もしく思います。
経営目標の達成と企業価値向上に向けて、従業員に期待することは何ですか。

萩原
置き薬ならぬ置き工具「MROストッカー」や「ニアワセ+ユーチョク」(荷物詰合わせ+ユーザー様直送)などトップから斬新なアイディアが出されていますが、社員も負けずに斬新なアイディアやビジネスモデルを強くするためのアイディアを出し、会社が目指す「お客様にとにかく便利に使ってほしい」という想いを現在の強固なビジネスモデルを活かして広げていくことを期待します。当社は、近年ではドイツに続きアメリカに海外工具の仕入れ拠点を設置するなど面白い展開もしています。社員があの手この手で挑戦し色々な形でビジネスモデルが展開し、新しい強みとなるような提案をしていってほしいと思います。
齋藤
日本企業の多くは決められたことを確実に行うことによって業績を上げていますが、それは安定した状況が続いている時にできることです。例えばバブル崩壊は、1000兆円ぐらいの泡が消え、日本が経験したことのない出来事でした。その後、日本企業の大半は成長できなくなり、約30年が経過した今もその状況が続いているのは、自分たちの決められたやり方、例えば既存顧客の維持強化や、新製品の開発より、日本が得意としてきた改良を行っていれば商売が成り立つからです。しかし、このまま続くはずが無いというのが私の考え方です。では、どうすれば自分たちのやり方を変えられるのかというと、お客様に最も近いところにいる人達からの提案が重要です。その人達が最も最先端のことを知っているのですから。自分が感じたことを自部署などにこうしたらどうかと提案ができているでしょうか。
企業は、個人の集合体ですので、結局、問題は個人です。企業の中で声の大きい人や部署があるとそこで物事は決まってしまいます。傍から見ておかしい企業だと感じるのは、個人あるいは数人の集合体によって決められたものを実践してしまうからです。その危険性をできるだけ無くそうとすると、現場やお客様に近い人達が自分の考えている事をしっかり発信し、企業はそれを受け入れて、会社の仕組みの中に反映していくことが重要だと思います。
そのためには企業風土が重要であり、女性、新入社員、外国人、障がいを持っている人、全く違う価値観を持っている人たちの意見をしっかりと受け入れ、意見に対して企業が回答していく必要があると感じ、そうした企業文化を会社全体で作り上げていってほしいと思います。
第62期 社外取締役インタビュー
当社では社外取締役のインタビューを定期的に実施しています。
「社外取締役としての役割」や「当社サービスの可能性」など、テーマを設定し、それぞれの視点で議論いただきました。