PROJECT REPORT 03

オレンジブックができるまで

発行部数21万2千部。モノづくり現場で必要とされるプロツール44万アイテムを掲載し、「モノづくり大辞典」として業界標準をつくるのが「トラスコ オレンジブック」(以下、オレンジブック)です。編集制作を担うカタログメディア部トラスコ オレンジブック課では、毎年、新しいオレンジブックの発刊に向けて、18名の社員が全力を注いでいます。

  • NAVIGATOR
    安倍 正浩
    大阪本社
    トラスコ オレンジブック課
    課長
    1982年入社

    オレンジブックをはじめとする各種カタログ制作の責任者。

  • NAVIGATOR
    西林 一葉
    大阪本社
    トラスコ オレンジブック課
    2010年入社

    SSP、SSLを経て、現職7年目となるベテラン社員。編集のスペシャリストとして実務のまとめ役を担う。

PROJECT REPORT 01ユーザーメリットを追求した誌面づくり

トラスコ中山の前身、中山機工商会がモノづくりの現場向けのカタログを創刊したのは1964年。「トラスコ オレンジブック」に改称してからも、すでに本誌は20年の歴史を持つ。
創刊以来、一度も絶やさず毎年発行してきたオレンジブックの大きな特徴は、常に掲載アイテムが増え続けているということ。通常のカタログなら、総ページ数を維持するために、売れ行きが悪いものは外して新規商品を随時入れ替えていく。「トラスコ中山は、在庫ヒット率を重視する会社。一度取り扱った商品は、それを必要とする方が一人でもいる限り在庫し続けるのがスタンスです。となると、カタログも一度掲載した商品を外すことはなく、そこに次々と新たな商品が加わって、最近では毎年約4万点ずつ掲載アイテムが増えています」とトラスコ オレンジブック課の課長の安倍は語る。
掲載点数が増えるほど重要になるのが、ユーザーにとっての俯瞰性や選びやすさ。商品情報は各メーカーより提供を受けるが、それをそのまま誌面に載せればいいわけではない。「取引メーカーは約2,000社あり、商品説明の表記や内容は各社それぞれ異なります。ユーザーが商品を比較しやすいよう、それらを統一していくことが欠かせません」と語るのは、同課主任の西林だ。例えば、電動工具の電源コードの長さや、発電機の騒音値などはユーザーにとって大切な選択のポイント。メーカーのカタログにその記載がなければ、一つひとつ問い合わせて誌面に反映していく。ユーザーメリットを追求し、商品1点1点にはメーカー連絡先も明記している。

PROJECT REPORT 02「在庫50万アイテム」に対応できる編集体制へ

長年抱えてきた課題もある。掲載アイテムの増加に伴い、1セットあたりのカタログ冊数も増え続け、2019年版では1セット12冊、総ページ数は18,900ページとなった。「当社が2023年に向けて在庫50万アイテムを目指す中、オレンジブックの掲載点数は今後も増え続けます。ただページ数が増えれば増えるほど、制作コストが膨らみ、編集期間が長くなるのも事実です」と安倍。
社員にかかる作業負担も増大する。「現在、18名の社員が商品カテゴリごとに担当を持っており、一人あたり大体1,000ページを受け持つ換算です。さらに当社は『オレンジブック.Jr』や『工事ブック』など他のカタログも複数発行していて、それも同じメンバーで手分けして制作しています」と西林は体制を語る。
理想は、ページ数を増やさずに掲載点数を増やし、さらに編集作業も効率化していくこと。その目標に向け、同課は2019年、2つの大きな変革に踏み切った。1つ目が、B5版だったカタログサイズをA4版へ変更すること。誌面の拡大により、1ページあたりの掲載アイテム数が増えれば、その分ページ数を圧縮できる。
2つ目が、自動編集システム「OLuce(オルチェ)」の導入だ。今まで付箋と赤ペンを使ったアナログ作業が多かったオレンジブックの編集の大部分を、PC画面上で行えるようにする。同課では、外部パートナーのシステム会社とともに3年前からこのプロジェクトの準備を進めてきており、2020年版でいよいよ初稼働を迎えた。

自社所有の撮影スタジオ『トラスコ 新町スタジオ』
オレンジブック掲載画像の撮影を中心に、各種動画制作やインスタグラム向けの画像などを撮影。
内製化を高めることにより、商品情報の更新の迅速化とリッチ化でプロモーションを強化。

PROJECT REPORT 032つの大きな変革を経て、次の進化を目指す

「今年は、オレンジブックを2回作ったようなもの」と安倍と西林は振り返る。まず完成した前年の2019年版をそのままOLuceを使ってB5版からA4版につくりかえる。その後、新規商品データを追加し、実際に刊行する2020年版を制作。編集期間も人手も変わらない中、「サイズ変更」「新システムの導入」の2つを同時に行う苦労は並大抵ではなかった。
しかし、それに報いるだけの成果は確実に表れた。2020年版は、2019年版よりアイテム数を増やしながらも総ページ数は約12%削減。見開きで見られるアイテム数が40点から52点に増えたことで、俯瞰性も大きく向上した。また、「カタログがどんどん厚くなり、机の上のスペースを圧迫する」など現実的な問題の打開策にもなった。
さらにOLuceを使うことで、これまで原稿に赤字を入れ、印刷会社に依頼していた業務の多くを社内で行えるように。「OLuceのフォーマットに品番を入力すると、必要な画像や表組みが自動で入り、誌面が8割方できあがってきます。掲載順序の入れ替えも画面上のドラッグ・アンド・ドロップでできるようになり、大幅に効率化が進みました」と西林。安倍も同意し、「内製化比率が高まったというのは重要な点です。これは単純に今まで外部委託していた業務を社内に戻したわけではなく、制作プロセスを圧縮した結果、内製化が進んだということ。編集期間やコストの観点からはそれが不可欠です」。
新たな編集体制が整い、オレンジブックは次の進化のステージを迎えている。次号以降は、重量の関係から1セットを2梱包で発送するなど新たな課題もある。編集はもちろん、印刷・製本から物流を含めたあらゆるプロセスの改善に挑戦を続けていく。

トラスコ オレンジブック.Com/
トラスコ デジタルオレンジブック

オレンジブックは、紙のカタログをそのまま電子化し、PCやタブレット上で見られる「トラスコ デジタルオレンジブック」でも情報を提供している。さらにこの電子カタログは、商品の検索・購入ができる総合サイト「トラスコ オレンジブック.Com」とも連動する。ユーザーは、オレンジブック.Comで商品を検索し、気になる商品の詳細ページを閲覧。同シリーズで色違いやサイズ違いを見たければ、ページ内に貼られたリンクからデジタルオレンジブックに遷移できる。電子カタログで俯瞰的に商品を見て、そこで別の商品に興味を惹かれれば、再びワンクリックでオレンジブック.Comの個別商品ページに移行。この2つの媒体を自在に行き来できるのが強みといえる。オレンジブック.Comの商品ページでは、紙カタログ用に作成したテキストが自動で表示される。そのため紙カタログの制作時には、のちにそれがWEB化されることを踏まえる必要がある。ユーザーが特定の商品ページを単独で見たときにも違和感がないように表現に配慮したり、検索されやすいキーワードを盛り込むなど工夫を凝らす。電子カタログ、総合サイトの制作を担うトラスコ オレンジブック.Com課とも密に連携する。

  • トラスコ オレンジブック.Com
  • トラスコ デジタルオレンジブック

ABE'S VOICE

他社であれば、丸ごと外注するようなカタログ制作を社内の専任部署で行う「自前主義」は、トラスコ中山の特徴です。専門業者に任せれば確かにうまく回るかもしれませんが、「試行錯誤を繰り返して得ていく経験値」という財産は培われません。オレンジブックは当社だけのものでなく、販売店様にとっての営業ツールともなるもの。さらには、100万以上の全国各地のユーザー様が自社の課題を解決するプロツール選定に必要とするものです。失敗できない緊張感は常にありますが、それ以上に「がんばれ!!日本のモノづくり」に貢献できる手ごたえは大きいと思います。

NISHIBAYASHI'S VOICE

立場上、仕事の進め方やルールなどを社内外のさまざまな人に伝える機会が多く、その際には「どうしてほしいか」だけでなく、その目的や背景、前後関係などを共有し、全体感をつかんでもらえるよう努めています。業務に関わる人が楽しく働けているかどうかは成果物のクオリティにも影響してくるため、コミュニケーションや信頼関係を大事にできる環境づくりが欠かせません。たくさんの人とともに、一年を通じて行う業務がひとつの本として形になる達成感は大きく、それが一番のやりがいだと思っています。

※掲載内容は取材当時のものです。